大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(う)1005号 判決

被告人 三谷国彦 外二名

〔抄 録〕

既に冒頭において一部説示したとおり、およそ社会通念がいかなるものであるかの判断は、現制度の下においては裁判所に委ねられているのであって、わいせつ性の判断基準としての社会通念なるものに、社会的、時代的な変化があること、すなわちわいせつ性なるものが社会、時代によって変遷があることは概して弁護人ら主張のとおりである。しかし性に関する社会通念の変化が存在し、また現在かような変化が行なわれつつあるにもかかわらず、超ゆべからざる限界としていずれの社会にも認められ、また一般的に守られている規範としての性行為非公然性の原則が存在することも否定できないのであって、社会通念という以上、わいせつ性の判断にあたって、最近の出版物等の傾向の把握およびそれらとの対比が或る程度必要であることは肯認せざるをえないが、弁護人ら主張のように何人からみても一見明白にわいせつ物と認められる場合にのみ処罰すべきものであるとは到底いえず、右のように解したからといって、憲法第三一条の趣旨に違反するものとはいえないのである。そして当審における事実取調の結果とくに当審証人纐纈庄太郎、同青木一幸、同生田目安郎、同三木常筰の各公判供述記載を総合すれば、自動販売機で売られていた本件写真等を掲載した本件ポケットポルノ第二号について、同証人らはいずれもこれを世間一般の人々に見せるのは好ましくなく、特に若年者に見せるのはまずいという認識をもっていたことが認められ、本件図画は右の程度のわいせつ性を具有していたものであることが窺われ、また当審において取調べた押収してある「風俗・性に関する世論調査」と題する印刷物一冊(前同押号の16)によれば、性表現が大胆かつ露骨になる傾向について、国民の約七割が好ましくないと思っていることが認められる((当審において弁護人らから提出された押収してある「青少年の性意識」と題する印刷物一冊(同押号の15)はこれを否定する決定的証拠とはなりえない。))のであって、これらの各事実によれば、本件写真・絵画等と同程度の写真・絵画等の掲載された書籍・雑誌等が、今日ではもはや一般にわいせつ物とは認められなくなったといえるほど著るしい社会通念の変化があったとは認められないのである。もとより当審証人青木滋、同石川弘義、同佐藤重臣の各公判供述記載については、いずれも有識人の個人的見解としては傾聴に値するものがあると思料されるが、これらの各供述記載によっても、本件写真等と同程度の写真等の掲載された書籍・雑誌等が、わが国の国民の間で広く許容されているとまではいい難い。

(石田 柳原 小林昇)

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